アルコール・インターロック装置 アルコール・インターロック装置

アルコール・インターロックとは

呼気吹込み式
アルコール・インターロック装置

日本でアルコール・インターロック機器を公式に定義しているのは、道路運送法の保安基準や車検制度、ASV政策を推進する国土交通省です。

2012年 国土交通省は 『呼気吹き込み式アルコール・インターロック装置』の技術指針を策定し公表しました。この文書により、アルコール・インターロックは以下のように定義されました。

「エンジン始動時、ドライバーの呼気中のアルコール濃度を計測し、規定値を超える場合には始動できないようにする装置です」

https://www.mlit.go.jp/common/000207320.pdf

アルコール・インターロック 社会実装事例

世界各国のアルコール・インターロックの社会実装事例を見ると、飲酒運転違反者への法制化が圧倒的な主流です。

一方で日本にはまだ飲酒運転違反者への装着法令は実現していません。
しかし日本では一部企業経営者が、企業防衛、高度な法令遵守、社会奉仕等を動機として、任意で装着している事例が多くあります。

社会
実装事例
対象 目的 北米 欧州 豪州 日本
1 飲酒運転違反者 罰則、罰金として ×
2 運輸、交通事業者 法令遵守、企業防衛 ○任意 ○任意

さて、世界中を見渡してみて、車両メーカーに対してアルコール・インターロック装置を標準装置として義務付けている国があるでしょうか?
また、世界を見渡してみて、飲酒運転根絶のためにアルコール・インターロック装置を標準装備を予定しているクルマのメーカーがあるでしょうか?
大切なひとを失った被害者や、路上が安全であってほしいと願う消費者が長年願い続けても、一向に実現しません。

なぜか? 理由は簡単です。

飲酒運転防止の観点から言えば、お酒を一滴も飲まないひとの車両にアルコール・インターロック装置の負担を課すよりも、お酒を飲んで運転した「法令違反者」へアルコール・インターロックを装着させる方が、飲酒運転防止の確率及び社会便益的に合理的だからです。
夢のような安全、安心な車社会を夢想しつつも、「もっとも危ないひとから始める」という具体的かつ実現可能性の高い政策からスタートするのが世界の主流なのです。

日本ではよくトラックに装着、バスに装着という、商用車へのアルコール・インターロック導入を耳にします。しかし、これらは「任意・予防的措置」です。飲酒運転事故を起こしたトラック会社が、運輸局(国土交通省)からアルコール・インターロック装着を強制されたわけでもありません。また、そんな法令もありません。企業経営者の、真面目な遵法意識、交通社会や業界を良くしたいという動機によるものほとんどです。
アルコール・インターロック装置に助成金をつけるという国土交通省の動きがありますが、そもそも、日本の飲酒運転者19,000人という事実を見る限り、本施策の効果性は、まさに「普及・啓発」を目的としているにすぎません。

市井にいる19千人の飲酒運転者に、政府、国として、どう対応するのか?これは国土交通行政の範疇ではない問題なのです。

日本の政府がとるべきアルコール・インターロック社会実装政策は、明確です。啓発やキャンペーンの段階はもう終わったと考えるべきなのです。
19,000人という飲酒運転人口の多さを客観的に捉えるならば、他国が実践しているような、極めて合理的な政策である「制裁措置としてのアルコール・インターロック装着義務」をいまこそ実現すべきなのです。

飲酒運転違反者アルコール・インターロック法 基本的なパターン

アルコール・インターロック装置の社会実装は、世界では定型化されています。法制度のテンプレートは数百事例もあるのです(世界のアルコール・インターロックページ参照)。

基本的なパターンはこうです。

飲酒運転→検挙される→行政処分or 刑事処分→罰金および運転免許停止
→アルコール・インターロックの強制装着命令を受ける
→装着を条件に運転免許停止期間が短縮される
→運転復帰(ただし限定免許)
→しかし、毎月アルコール・インターロック装置のメンテナンスとデータ提出のための出頭(最寄りのショップに)。

アルコール・インターロックと免許制度

アルコール検知器と、アルコール・インターロックの違い

昨今の日本では、飲酒運転防止装置といえば、個人向けアルコール検知器や企業向けのアルコール検知器等、多様な機種が市場に多くあります。
アルコールを検知するという面においては、アルコール・インターロック装置と一般的なアルコール検知器は、呼気を使ってはかるという意味でも、センシング技術としても、ほぼ同じです。

しかし、一般のアルコール検知器とアルコール・インターロック装置には大きな違いがあります。

アルコール検知器は、酒気帯びを検知し数値化したり表示するだけです。一方アルコール・インターロック装置は車両に固定的に装着し、アルコール検知されるとエンジンを始動させない機能を持っています。

機種 デジタル記録
エビデンス機能
カメラ
機能
エンジン
かけない機能
アルコール検知器(簡易ハンディ) × × ×
アルコール検知器(スマホ対応) ×
アルコール検知器(PC接続型) ×
アルコール・インターロック

アルコール・インターロック、法社会システムとの親和性

アルコール・インターロックは、エンジンを始動させない機能だけが取り柄ではありません。
装置には、必ず「電子ログ」機能があります。この電子ログデータがあるからこそ、義務化しやすい機器と言えます。
アルコール・インターロック装着者=飲酒運転違反者は、装着期間中に運転時の酒気帯び検知がゼロであることをログデータで監視されます。何時何分にクルマを使おうとしたのか、何時間運転したのか、車両の挙動がデータで見える化されます。もし飲酒検知データがあると装着期間が延びる等、罰が追加される法事例もあります。

ログ監視による効果

アルコール・インターロックの重要な機能は「記録・ログ」です。アルコール・インターロック法令とは、装着して終わりではありません。装着後に一定期間のデータを当局に提出し、身の潔白を証明しつづけなければなりません。かつこの期間、データ提出自体にお金がかかります。つまり、罰金を毎月払い続けているのです。このように、飲酒運転防止装置を交通違反のさらなる罰金として自己負担で装着する制度設計となっており、行政としては大きなコスト負担がなく、飲酒運転者へ罰則を科すことができるのです。社会実装しやすい制度であると言えましょう。

「アルコール・インターロック」ログデータイメージ

アルコール・インターロック装置には必ず電子ログを保存する機能があります。

アルコールインターロック装置のログとはすなわち、「XX月XX日XX時XX分の外出は、しらふ運転だった」という証拠にもなります。
もし運転しようとした際、呼気にアルコール成分が含まれていると、エンジンがかからないだけではなく、酒気帯び数値も、時刻もすべて残ります
装着させた行政も、本人も、エビデンスをもとにアルコール・インターロックを運用するのです。

昨今では、世界でもカメラ付きのアルコール・インターロック装置が多く、なりすまし防止機能も高度になってきています。
下記は、アルコール・インターロックの電子ログのイメージです(だいたいソフトウェアで閲覧します)。

アルコール・インターロック技術指針

日本では、2012年に国土交通省が策定した『呼気アルコール・インターロックの技術指針』が、唯一の行政文書となっています。
その名の通り、装置の技術的な仕様を定義したものです。

参照規格

日本の『呼気アルコール・インターロック 技術指針』は、主に、欧州の以下の規格がベースになっています。

Alcohol interlocks -Test methods and performance requirements-
EN 50436-1
飲酒運転「違反者に対する装置」
EN 50436-2
マウスピースと呼気測定を用いた一般的な飲酒運転防止装置

呼気アルコール・インターロック技術指針文書は、このように構成されています。

技術指針 本編(P1~11)
1 2 3 4 5 6 7 8 9
目的
用語
技術的要件
校正・整備に係る要件
取付説明書
性能試験
耐久試験
ごまかし及び測定回避を
防止するための試験
誤作動防止に係る要件
参考(P12~13)
欧米において飲酒運転違反者の免許停止処分の代替措置として活用される
呼気吹込み式アルコール・インターロック装置に必要とされている付加的な要件
再測定(用語)
電子記録要件
再測定要件
較正(較正間隔経過時)
整備(整備間隔経過時)
その他の試験

技術指針 要件イメージ

アルコール・インターロック国内実績

日本国内では、東海電子(株)がアルコール・インターロック装置の実績を公表しています。
次のような実績となっています。

【年度ごと実績】

2009年に発売開始後12年で役2,700台。これらは飲酒運転違反者ではなく、民間企業(トラック業)の導入がほとんどです。

【累計実績】

アルコール・インターロック取付

アルコール・インターロック装置は、伝統的にエンジンをスタートさせるキー部分のイグニションを介して、スターター信号を制御します。アルコール有無によりエンジン始動を制御するリレー回路として作動します。

アルコール・インターロック 取扱説明書について

アルコール・インターロックの取扱説明書には基本的な配線指図書が含まれています。
電気的な接続は、ドライブレコーダーやカーナビ等一般的な車載の電気装備品と大きな違いはありません。

<目次>

  • 1.適用
  • 2.各装置の名称と機能
  • 3.アルコール・インターロックの取付
  • 4.アルコール・インターロックの操作方法
  • 5.アルコール・インターロックの運用にあたっての設定
  • 6.センサーユニットの校正と整備について
  • 7.表示の説明
  • 8.主な仕様
  • 9.困ったときは

アルコール・インターロック装着動画・写真

アルコール・インターロックの装着方法は簡単です。カーナビやドライブレコーダー、デジタルタコグラフと変わりません。
以下動画をご覧ください。

メーカー車種実績 ランキング

アルコール・インターロックの装着可否は、基本的にトラックメーカーを問いません。
なお、キーシリンダータイプであれば、ほぼ装着可能です。
ただし、昨今のプッシュスタート車両は、都度信号調査や現地調査が必要となり、施工してみないとわからないのが実情です。

アルコール・インターロック装置 導入企業名(掲載許可アリ)

  • 株式会社アイ・エス・ライン
  • 株式会社イシダカーゴ
  • 市川運送株式会社
  • 磐城通運株式会社
  • 株式会社エスユーライン
  • MRI人間ドック(医療法人樹会 小林医院)
  • 岡崎陸運株式会社
  • 神奈川柑橘果工株式会社
  • 熊本通運株式会社
  • 呉運輸機工株式会社
  • 株式会社嵯峨山通商
  • 三雪運輸株式会社
  • 城南観光有限会社
  • 株式会社スナダフーズ
  • 株式会社須走運送 (運輸)
  • 株式会社タハラ運送
  • 帝都運輸機工株式会社
  • 働産運輸株式会社
  • はごろも運輸株式会社
  • 橋本運輸株式会社
  • 株式会社ベスト・トランスポート
  • 株式会社ベストカーゴ
  • 松陸運輸株式会社
  • 都運送株式会社
  • 都運輸株式会社
  • 有限会社向中野商会
  • 横浜急送株式会社東京営業所

アルコール・インターロック操作方法

アルコール・インターロック装置は、いったん取り付けてしまえば、ドライバーにとってはごく簡単なアルコール検知器に過ぎません。
電源を入れ、呼気を吹き込み、ゼロだったらエンジンがかかり、ゼロ以外ではエンジンがかからない。
操作説明は、たったこれだけです。

  • 1

    衛生のため
    専用のマウスピースを
    使用します。

  • 2

    黄色いボタンでアルコール
    チェックの電源をいれます

  • 3

    暖気で20秒ほどかかります
    この時点でキーをまわしてもかかりません。
    Blo表示になったら吹き込んでください

  • 4

    約4秒吹き込みます

    バーが息の強さです。2~4本のバーが出るように約4秒吹き込みます。「ピピッ」となったら吹き込みをとめてください

  • 5

    「エンジンをかけてください」 という音声が聞こえたら、キーをまわしてエンジンをかけてください

    ↑こちらの表示の場合は
    エンジンがかかりません!

エンジン始動後の飲酒運転防止機能

アルコール・インターロックには、「再測定・催促」という機能があります。
運転開始後の飲酒有無を確認するための機能です。
一定の時間経過後、抜き打ち的にアルコールチェックを促しますので、エンジン始動後途中で飲酒をすることが出来にくくなっています。

オーバーライド(解除・システム無効化)機能

車に関する故障や、運転者の不在時の車両緊急移動や、エンジンがかからないときの人命(暖房など)を考慮し、緊急時にインターロック機能を停止(無効化)する機能。

  • 踏み切り時のエンスト

  • 運転者が運転不能のとき

  • 車検に出すとき

一般保安装備と、飲酒運転防止機能

アルコール・インターロックを日常生活で使うためには、保安の考えも必要です。
非常用 解除ボタンを常設し、いざというときには呼気チェックをしなくてもエンジンがかかる状態に戻すことができます。これを車内のどこかに取り付けます。
しかしこれは、いざというときに飲酒運転を可能にする装備とも言えます。従いまして、一般的に「無効化」は、物理的なシールやログで監視するルールが施されます。

飲酒運転違反者への装着の場合は、基本的に企業ではなく行政がログデータ監視をするため、無効化機能の濫用・乱用は抑止されます。

車検制度とアルコール・インターロック

アルコール・インターロック装置装着車両を車検に出す場合があります。
整備事業者の整備士が、エンジン始動のたびに呼気チェックを実施しなくて済むようにしたい場合もこの「無効化」スイッチを使うことがあります。

アルコール・インターロックでよくある不正について

インターネット時代ですから、アルコール検知器やアルコール・インターロックの不正の方法を調べることは簡単なのかもしれません。不正グッズも容易に入手、容易に実行できてしまうかもしれません。とくに伝統的なのは、風船や知人による身代わりです。

アルコール・インターロック導入者は不正が起こり得る前提で、再測定機能の使用や無効化スイッチデータのこまめなチェック、ドライブレコーダーを運転席向けの設置等により運用でカバーする必要があります。

アルコール・インターロックの助成金

令和3年度安全装置等導入促進助成事業対象装置一覧

助成対象機器は、2メーカー3機種です。国土交通省の呼気アルコール・インターロック技術指針への適合状況を全日本トラック協会に書面で提出し、登録されています。

令和3年4月1日現在

装置
メーカー名
装置名称 型式 備考
秋田貿易 アルコ・インターロックPro FIT228-LC
東海電子 ALC-ZERO T-ALC-LK100(カメラなし、SDなし)
ALC-ZEROⅡ T-ALC-LK200(カメラし、SDあり)

このように、日本では運輸業界での自主的な普及キャンペーンや、運輸事業経営者の自主的な判断で取付が少しづつ進んできました。
しかし日々、路上にいる飲酒運転者の発覚数は19,000件。
このような事業用自動車での普及状況とはうらはらに、日々の市井の飲酒運転者の潜在人数は恐ろしいほどの数字です。
対策すべき飲酒運転者は、どこにいるのか? プロドライバーなのか? 一般企業社員なのか?
はたまた、職業についていないひとなのか? 再犯者はどれくらいいるのか?
内閣府の総合交通政策、国土交通行政、警察運転免許行政、アルコール健康障害基本法(依存症対策)というスケールで、「19,000違反者への装着」を考える場やチームがないように見えるのです。